世界に誇れる日本画の世界
日本画ってなに?
油絵やアクリルとかと違うの?
そんな疑問をお持ちの方が多いのではないでしょうか?
それもそのはず、、
日本画は、1000年以上の歴史があるのにもかかわらず、
現代ではあまり知られていないのが現状だからです。
日本画とは、油絵やアクリル絵と同じように、絵を描くための一つの技法のことを言います。
簡単に言えば、
色の付いている岩を細かく砕いて、それを絵具代わりにして、
膠(にかわ)という接着剤を使って、紙にその岩を付着させる方法です。
最近では、
世界的に有名な日本画家である千住博さんのご活躍もあり、
再び日本画の技法に世界が注目し始めています。
それくらい日本画の技法というのは素晴らしいものなのです。
ですので、順番に、
- 日本画ができるまで、
- 日本画の素晴らしさ、
- 日本画のメリットとデメリット、
- 日本画で制作するまでの流れ、
- 日本画の道具、
をご紹介します。
日本画ができるまで
むかしむかし、
46億年前にう惑星(石)たちが衝突しあって、
長い年月をかけてゆっくりと地球という惑星が出来上がりました。
その後、人類が誕生して、人間は地球上に綺麗な色の天然岩や石があることを発見しました。
人間は、その石を美しいと思い、宝石として大切に身につけたりしたりして、
生活を美しく彩っていました。
そして人間は、大胆にもその岩を細かく砕いて、絵具代わりにして使い始めたのです。
身体や顔に塗って、お祭りをしたり、洞窟の中に絵を描いたりして、
生命の感動と人間の奇跡を表現し始めました。
これが日本画で使われる、「岩絵具」の始まりです。
その後、
岩絵具には、膠(にかわ)という樹脂と、雲肌麻紙(くもはだまし)という紙が
抜群の相性であることを発見して、
それ以降、日本画技法として1000年以上愛され続けてきました。
日本画の魅力ってなに?
日本画の魅力は、上で説明した「岩絵具」にあります。
46億年前、宇宙は6つの大きな惑星がぶつかってできたと言われています。
つまり、地球も、月も、太陽も、足元にある石ころも、、、
全ての岩や石には、宇宙誕生から現在まで46億年の歴史と息吹が詰まっているのです。
宇宙の神秘そのものが眠っている宇宙の中の宝石なのです。
そんな宝石の中でも、さらに貴重な美しい彩りを放つ岩を砕いて岩絵具として使うということ。。。
それは宇宙誕生の時からの46億年分の宇宙の息吹を使うということ、
宇宙の神秘をあなたの手でコントロールするということ、
宇宙の宝石を使って、あなたの創造という新たな宝石を作っている、ということになるのです。
なんともロマンチックではありませんか!?
現代では、岩絵具にとって変わる、油絵やアクリル絵具など
多種多様な絵具が出てきたお陰で、岩絵具の需要は少なくなってしまいました。
しかしだからと言って、岩絵具の素晴らしさを捨てることはできません。
日本画の技法は、、
値段が高いだけの価値があるのです。
面倒な手間をかけるだけの価値があるのです。
長年人間に愛され続けた理由があるのです。
宇宙の神秘を感じること、
自然と人間が同化すること、
全ての生命が共存することの奇跡、、、
このような目に見えない感覚を感じた時、人間は宇宙の神秘を体感します。
それは歓喜にも近い、生命の喜びです。
それは根底で人間に大きな影響を与えているのです。
そんな生命の喜びを沸き立たせてくれる日本画の技法だからこそ、長い時を経ても無くならないのです。
高度資本社会の現代では、周りに物と情報が溢れているので、目に見えるものだけに意識が向きがちです。
しかしその反面、人間の心はしっかりと、目に見えないものの大事さもしっかり感じとっているのです。
有名な芸術家の展覧会があると長蛇の列が出来たり、
スピリチュアルブームが起きたり、
神社やお寺に人が絶えないことなどは、そのいい証拠です。
日本画という技法は
そんな目に見えない人間の心の根底が求めている神秘、奇跡、美しさを体現させてくれる装置なのです。
さらに
日本画は、自然に従って仲良く生きていく、というアニミズム的な発想の技法です。
自然に逆らわずに生きていくという感覚を強く持っている日本人にとっては、
とても馴染みのいい表現方法だと思います。
その日本人(アジア人)の独特の感覚を表現できるのが日本画ですので、
自然を支配しようとする西洋的発想から見ると、対照的で面白く世界にも十分通じる技法だと思います。
ですので、あなたも岩絵具で傑作を作れば世界に評価されるかもしれません。
是非、岩絵具を使用している絵画を見てみてください。
是非、岩絵具を使って、あなたの手で描いてみてください。
あなたの手の中に、宇宙の宝石がキラキラと輝いていることと思います。
宇宙の息吹、
生命の神秘、
誕生の奇跡、
を感じれるところが、世界に誇れる日本画の素晴らしさです。
そんな奇跡のような技法を、あなたも試してみませんか?
日本画の素晴らしさを世界に広めている第一人者である日本画家千住博さんは、
こちらの本で、分かりやすく親切丁寧に日本画の素晴らしさを表現してくれています。
是非参考されてみてください。
日本画のメリットとデメリット
メリット |
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デメリット |
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日本画製作の流れと道具
①鉛筆デッサン&スケッチ (簡単な構図と色合いだけで十分です)
②水張り (麻紙をキャンバスのパネルにピンとシワをなく貼るための作業です)
水張りのやり方 ← こちらを参照ください。
③転写(トレース)
①のデッサンを②で作ったキャンバス上に書き写しします。
転写方法1:捻紙(ねんし)を使う
捻紙とは、絵具や木炭の粉などの顔料を塗布した転写用の紙です。 (捻紙をもっと詳しく知りたい)
SM判=227×158mm
転写方法2: トレーシングペーパー(半透明の紙)を使う (子供の頃よく写し書きして遊んでいた半透明のあれです)
A.①のデッザンをトレーシングペーパーに書き写す。
B.書き写したトレーシングペーパーの裏を鉛筆や木炭で一面塗る
C.麻紙の上にトレーシングペーパーを置き、Aで書き写したデッザンをもう一度なぞり書きする。
④骨書き
転写した線を墨で本書きします。 線が太くなりすぎないように、心を込めて描いてください。
書道用の筆と墨で構いません。筆は細く小さなものがいいでしょう。
小さな筆だと断然イタチの毛がオススメです。弾力も墨含みもいいです。イタチ独特の弾力が、細かな線も太い線も描けて、味を出してくれます。
⑤膠水(にかわすい)を作る
絵具で色をつける前段階まできました。
しかし日本画で絵具として使う胡粉も岩絵具も、ただの岩と貝を細かく砕いたものなので、紙への接着ができません。
そこで接着剤代わりになるものが、膠(にかわ)です。
古代壁画、原始絵画など昔から使われており、動物の骨、皮、腸、などからとれるコラーゲンを濃縮させた接着剤です。
これを胡粉や岩絵具と混ぜて使用するために、膠(にかわ)を水に溶かした、膠水(にかわすい)を作りましょう。
A.膠一本(約10g)をタオルなどに包んで細かく砕く (あなたの表現、使用量により膠の量は変わります)
初めから細く砕かれている膠だと砕く必要はありません。
B.水50~100ccを膠鍋(にかわなべ)容器に入れ、ボウルや鍋の中でお湯の中でゆっくりかき混ぜながら溶解する。(家庭で代用できるものがあれば、それでも構いません。)
注意 *直火を避ける&沸騰させない。→定着力が弱まるため
C.完全に溶けた後、不純物を取り除くためにガーゼで漉す(こす)。
D.胡粉や岩絵具と混ぜて絵を描きます。
膠水(にかわすい)の保存方法
膠水の接着力は気温や湿度に影響される結構デリケートな接着剤です。
夏季: 冷蔵庫で保存して、数日で使い切るようにする。←気温が高いと腐敗やカビが発生し、接着力が低下するため。
やや濃い濃度で作ること。 *注意:濃すぎると画面に亀裂が入りやすくなる。
冬季: 時々暖めながら使用する。←凍結すると膠水内のコラーゲンが破壊され接着力が低下するため。
やや薄い濃度で作ること。 *注意:薄すぎると絵具が剥がれ落ちやすくなる。
膠は薄いほど絵具の発色がいいので、薄いながらもしっかり絵具が定着する濃度が理想的です。
丁寧に自分で作るとこの工程が必要ですが、
これが面倒な方は、初めから液体になっている物も売っていますのでご安心ください。笑
本当、現代に感謝です。
⑥地塗り(下塗り)
A.画面全体に胡粉(ごふん)を塗ります。 色付きと発色がよくなります。
胡粉も初めから粉末になっている物なら問題ないですが、そうでない場合は、自分で細く磨り潰してから塗ってください。
粉末状になっている胡粉
胡粉が荒く、自分で磨り潰す場合
B.画面の下地になる色を塗ります。
⑦隅取り
墨で大まかな陰影をつけます。この後にする色付けの時に役にたちます。
⑧彩色と仕上げ
岩絵具を使い、お好みの色で細部まで仕上げていきます。
岩絵の具は2種類あります。
A.人工的に作られた岩絵の具。(新岩絵の具)
着色ガラスの粉末を混ぜることで作られた岩絵の具です。安いので初めての方にオススメです。
B. 天然岩から作られた岩絵の具。(天然岩絵の具)
天然なだけあって、美しい色合いと、上で説明した宇宙の息吹を感じることができます。
しかしながら、取れる量も少ないため、非常に高いです。
この作品だけは、最高級に仕上げたい!という作品がある方には是非オススメです。
⑨完成
世界にひとつだけの、あなたしか作れない傑作ができましたか?
日本画の道具
日本画は使う道具は、アクリルや油絵とは違いますので、ここでご紹介します。
日本画は1000年以上、同じ絵具、紙、にかわを使用されています。
なぜなら変える必要がないほど抜群の相性だからです。
しかしながら、どれもほんと高くつきますよね、、トホホ泣。
でも一度揃えれば、長年使える道具たちですので、まーいいかもしれないですね。笑
筆 | 日本画用の筆を使ったほうが、絵具の含みもいいですし、描きやすいです。 ドーサ引き、膠塗り、背景色、大きな部分を塗る時などの時には太い筆が必要です。 |
紙 | 美濃紙 岩絵具、水干、チューブ、顔料、に適しています。楮(こうぞ)という植物の樹皮を原料にしています。こちらは滲みを防ぐドーサが予め引かれているので楽です。 |
鳥の子紙(とりのこし)雁皮(げんぴ)三椏(みつまた)パルプを原料芸能人がサインする色紙になっているので、そのまま使えます。水張りから自分でする上級者の方 | |
雲肌麻紙(くもはだまし)初めて使ってみる方(ボードになっているので、水張りの必要なし)水張りも自分でやる上級者の方(滲むのを防ぐドーサが予め引かれています) | |
接着剤が必要な絵具 | 岩絵具 |
水干絵具(すいひえのぐ) | |
水飛胡粉 | |
接着剤が不要な絵具 | チューブ絵具 |
顔彩 |
初心者キットを買うと全部揃っているので楽ですよ。
さあ、世界が誇る日本画の技法で、あなたの傑作を生み出してみませんか?